<編集履歴> 03Apr.2020公開、15Apr.2024見直し更新(第15回目、八戸の写真追加、見直し実施)
【概要】
(1) 陸上自衛隊では1971年から1995年までの間に38機のTH-55Jを導入し、北宇都宮駐屯地と明野駐屯地にてヘリコプターの初等飛行訓練に使用してきた。
(2) 運用期間中に2機(61303、61308)を失っている。
(3) 用廃後は24機が教材や展示機、あるいは放置機として見ることが可能であったが2017-2018年頃に機体の一部にアスベスト(石綿)が使用されていたことが発覚し、急きょ封じ込め作業あるいは撤去・解体・廃棄作業が進められた。封じ込め/除去作業が行われたのは八戸駐屯地の展示機のみであり、霞ヶ浦駐屯地、石川県立航空プラザ、日本航空学園(能登空港キャンパス)、相浦駐屯地および北宇都宮駐屯地に展示されていた機体は全て撤去・解体・廃棄処分された。無償貸与機であるハズの所沢航空発祥記念館の保管庫に残る機体がどうなったのかは確認できていない。
(4) 国内に残る機体は3機と考えられる。
【残存状況まとめ】(2024年4月15日確認)
導入: 38機(100 %)
事故抹消: 2機(2/38 × 100 = 5.3 %)
展示機・訓練機: 24機(24/38 × 100 = 63.2 %)
展示機・訓練機後に撤去: 21機(21/38 × 100 = 55.3 %)
現存機: 3機(3/38 × 100 = 7.9 %)
【展示機】(全3機、2024年4月15日確認)
(1) 61307 福島県 Old Car Center Kudanに展示、 Tail部分はない。元は北宇都宮駐屯地訓練機であることが1989年4月29日公開時の写真により確認されている。
写真1 Old Car Center Kudan館内にH-13KH(左)と並んで置かれていてるTH-55J(右)。テイル部分は無い。(2023年8月26日撮影)
(2) 61328 所沢航空発祥記念館 2019年4月6日保管庫公開時に確認。
写真2 所沢航空発祥記念館の保管庫にある61328号機。(2019年4月6日撮影)
(3) 61336 八戸駐屯地(40.5519N/141.4516E)、2003年4月以降に存在。2019年度内に石綿部品の除去・飛散防止処置実施。2024年4月13日公開時に存在確認。陸上自衛隊の直接管理機で残るのは本機のみだ。
写真3 八戸駐屯地のTH-55J。(2024年4月13日撮影)
【展示後撤去あるいは現状不明】(全21機)
(1) 61304 北宇都宮駐屯地 訓練機 撤去済(撤去時期不明) 1984年4月29日公開日~1989年4月29日公開日にはエンジンを外されて訓練機となっていた。
(2) 61313 石川県日本航空学園 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため
(3) 61314 千葉県 成田航空専門学校利根校舎(現成田つくば航空専門学校)、2012年10月22日に校舎脇にあることが確認されているが、2016年6月2日以降のGE-Pro画像では確認できない。また近年のネット上の写真では確認できない。
(4) 61315 霞ヶ浦駐屯地 撤去済(撤去時期不明)
(5) 61317 目達原駐屯地 撤去済(2010年3月以前)
(6) 61319 千葉県 成田航空専門学校利根校舎(現成田つくば航空専門学校)、2012年10月22日に校舎脇にあることが確認されているが、2016年6月2日以降のGE-Pro画像では確認できない。また近年のネット上の写真では確認できない。
(7) 61320 宮崎県 航空大学校宮崎本校 航空大学で使用していたJA7753に塗装変更(本当のJA7753は海外に売却済)、2015年10月度公開。コクピットにJG-1320のラベルあり。日飛のIRAN銘板あり。2022年頃に使用する機体を更新した際に、旧型の保有機を全て廃棄したという。(このうちビーチクラフトH-18は2024年3月末まで残されており、保存するために総額5,500万円のクラファンが行われていたが、集まった金額は百万円に満たなかった)
(8) 61321 茨城県 百里基地近くに2000年頃まで放置され、撤去済(撤去時期不明)1992年5月には北宇都宮駐屯地の航空公園に展示されていたが31335号機と置換された
(9) 61322 美幌駐屯地 撤去済(2010年8月存在確認)
(10) 61323 青森駐屯地 撤去済(2014年7月以降、2015年6月以前)
(11) 61324 石川県立航空プラザ 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため
(12) 61325 青野原駐屯地 撤去済(2006年以前)
(13) 61326 霞ヶ浦駐屯地(36.0383, 140.1907)、2002年9月から2013年5月の間存在確認、2019年に撤去とのこと。
写真4 霞ヶ浦駐屯地広報センター脇にあった61326号機は2019年に撤去されたという。 (2015年5月17日撮影)
(14) 61329 土浦駐屯地 撤去済(2010年以前)2004年2月存在確認
(15) 61331 相浦駐屯地(33.1765, 129.6588) 撤去済。2018年5月4日存在確認、2020年11月14日取得GE-Pro画像に存在せず。
(16) 61332 石川県日本航空学園 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため。本機は用廃展示機として2003年9月の明野駐屯地祭で展示されていた。
(17) 61333 石川県日本航空学園 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため
(18) 61334 茨城県伊奈町きらく山ふれあいの丘 撤去済(2012年1月以降、2016年12月以前)
(19) 61335 北宇都宮駐屯地(36.5168, 139.8758)、2012年6月4日公開日以降存在(先代61321号機と置換展示)、2019年度内に石綿部品の除去・飛散防止処置実施。Google MapのStreetView2020年12月取得画像で存在を確認できず。渉外広報班発信2021年3月ごろ撤去。
写真5 2020年12月末~2021年3月末ごろに撤去された北宇都宮駐屯地の61335号機。(2006年5月21日撮影)
(20) 61337 石川県日本航空学園 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため
(21) 61338 石川県日本航空学園 撤去済(2019年3月)アスベスト処理のため
【参考:事故機】(全2機)
(1) 61303 1974年08月14日事故
(2) 61308 1984年09月04日事故
【参考】
処分公告がある程度の期間はネットで閲覧できる。ネット上で見られなくなったものも情報公開を請求すれば3~5年間程度は確認できるハズだ。また有料だが民間の入札情報サービスを利用すれば、相当な期間は確認できると思う。以下に記す公告は見られる場合にはURLを張り付けるが、リンク切れとなった場合にはタイトルだけを残すことにする。
1. 霞ヶ浦駐屯地にあったTH-55Jの解体処分に関する公告(令和2年1月27日作成)
2. 小松の航空プラザ(1機)と輪島の日本航空学園の機体(5機)の処分に関する公告(履行期限は平成31年3月29日)。なお日本航空学園所有機は2018年10月6日の学園祭時にはローターを外されて敷地の片隅に寄せられており、返却直前の様子であった。
3. 北宇都宮のTH-55JとUH-1Bはアスベストを含む部品の撤去と処分のみで、機体は残されている可能性が高い。(履行期限は令和2年2月28日)→結局、機体ごと撤去された。
4. 八戸駐屯地の機体は封じ込め対策を行った。その工事の公告はこちら。(令和元年5月13日入札)
https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/koukoku/fin/
以上