用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 T-6の展示機

<編集履歴> 12Dec.2019公開、15Jul.2023見直し更新(第16回目、014号機発見)

 

【概要】

 1954年7月1日に防衛庁自衛隊が発足した直後の7月6日には臨時松島派遣隊が開隊して米空軍のT-6にて航空自衛隊の第1機操縦学生の訓練が開始されている。国空自衛隊では半年後の1955年1月20日から1957年11月12日までの間に米軍からT-6D(10機)、T-6F(10機)、T-6G(160機)の合計180機の供与を受けて、パイロット育成のための練習機として使用していたが1964年3月末に練習機としての運用を終えた。最終飛行は1964年3月9日のようだ。そして1963年度末(1964年3月末)には救難用途で使用する20機を残して全機が用途廃止となり、1964年10月1日には在籍する44機分を教育・展示用として民間に寄贈するための贈与協定が米国との間で締結された(この時点で19機が別途在籍していたが、これらも贈与対象となった模様)。最終的には供与機数の約三分の一に相当する55機程度が教育・広報用として全国各地に貸与された。しかし2021年初夏に空幕広報室から入手した資料にはこれらの機体に関する記録が記載されていなかったことから、防衛省の物品管理書類には記録上は残されていないものと考えている。1964年の「貸与」時点で防衛省の手を離れたため、書類上から消えてしまったのではないだろうか。唯一、無償貸付機である旨の記録が残るのはヤマザキマザックに貸与した2機だが、これは現行の管理システム上で新たに貸与する手続きを行う際に便宜上必要だったから登録したのだろう。上述した55機の民間貸付機のうち、すでに貸与先が存在しなくなったり、廃棄されたものが民間人・民間業者の間で「流通」して、民間の展示機や個人コレクションとなっているものと考えている。

 2023年7月15日時点では自衛隊基地・施設に6機、民間施設、公共の公園、教育機関での教材等で13機の合計19機が残されている。このうち1機は格納中で非公開、またもう1機はコクピット部分のみだ。そしてこれ以外に解体待ちの状態のもの1機が松島基地に放置されている。

【展示機一覧Aircrafts】(S/N順)

(1) 52-0001 (T-6D) 愛知県豊川市 サイバルゲームフィールド「蒼空ハッスル」のAフィールドに機首先端(スピンナー)からコクピット後方までの胴体部分と胴体から主脚部分までの翼部分が置かれている。分割可能な部分で分離されている状態で、主翼は機体近くに積み重ねてあるようだ(2023年1月時点の状況)。私自身は未訪問かつ未撮影の案件だ。

 

(2) 52-0002 (T-6D) 福岡県芦屋基地 保存状況は悪く鉄骨で主翼を支えている。撤去は時間の問題だろうか。

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写真1 芦屋基地のT-6D(52-0002)。(2018年2月18日撮影)

 

(3) 52-0010 (T-6F) 静岡県浜松広報館 2機ある保存指定航空機のうちの1機だが、現在では格納されてしまい非公開。なお保存指定されている機体は2機ともF型であり、最大数のG型は指定から外されている。航空自衛隊の保存指定制度は浜松広報館が建設された際に作られたものだが、この時点で「綺麗で保存に耐えうる機体」はこれらの2機だけだったのだろう。

写真2 空自の保存指定機となっている2機のT-6Fのうちの1機。今は格納されてしまい見ることができなくなっている。(2018年8月13日撮影)

 

(4) 52-0011 (T-6F) 静岡県静浜基地 2機ある保存指定航空機のうちの1機で基地祭時に見ることができる。浜松広報館の52-0010号機をレストアした後で、静浜基地の要請により同じ作業チームによるレストアを実施した。

写真3 静浜基地のT-6D (52-0002)は空自の保存指定機だ。(2023年5月28日撮影)

 

(5) 52-0014 (T-6F)  兵庫県加古川市神戸電子機械(株)野村ヤードに放置されている。本機は2006年6月24日~2011年7月25日には本社(加古郡稲美町六分一1183-36)前に置かれていた胴体部分(コクピット直前から垂直尾翼水平尾翼の無い胴体端まで。主翼は脇に置かれていた)だと考えている。1965年に用廃となってから、2006年に撮影されるまでの間の機体経緯は不明だ。GE-Pro画像によると2014年4月9日取得画像以降は野村ヤードに置かれていることが分かる。

 

(6) 52-0041 (T-6G) 山梨県日本航空学園保有機。Jウイング誌2021年8月号別冊「全国保存機・展示機ガイド2021」p.21を読むと本機は「廃棄の可能性あり」との注意書きが記されている。これは上述した空幕広報室から入手した資料中に本機が含まれておらず、締切までに最新版の衛星画像等で存在が確認できなかったために記載した「逃げの一文」だ(この部分の執筆はワタシです)。雑誌出版後に現地を訪問した方のTwitter投稿などで存在していることが確認されている。

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写真4  敷地外周道路からいつでも見ることができる日本航空学園山梨キャンパスのT-6G。(2016年10月15日撮影)

 

(7) 52-0075 (T-6G) 愛知県小牧基地掩体壕内 奈良基地より2011年9月15日に搬送された。基地公開時でも近づけないことが多く、写真コレクションに加えるのは大変な機体だ。

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写真5 小牧基地内の掩体壕に展示されているT-6G (52-0075)。(2016年3月13日撮影)

 

(8) 52-0083 (T-6G) 奈良県大和郡山市 奈良工業高等専門学校(奈良工業高専) 1965年6月14日に搬入され、同窓会設立50周年を記念して2017年に学生有志とOBによるレストアが行われた。

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写真6 2017年にレストアされた奈良工業高専のT-6G。(2022年4月2日16時20分ごろ撮影)

 

(9) 52-0084 (T-6G)   岐阜県美濃加茂市 ヤマザキマザック工作機械博物館 和知幼稚園の展示機を引き取り、コクピット部分をスケルトン展示にしている。上述したとおり、現行の記録上では唯一の(2機分あるが)空自のT-6の無償貸付機。

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写真7 スケルトン仕様で展示されたT-6G(52-0084号機)のコクピット部分(側面)。(2021年7月28日撮影)

 

(10) 52-0098 (T-6G) 山梨県河口湖自動車博物館保有機。元は福岡県久留米市石橋文化センター展示機だ。Jウイング誌2021年8月号別冊「全国保存機・展示機ガイド2021」p.20に本機は掲載されていない。これは元ネタとして参照していた本Blog記事(当時)において記載漏れしていたことが原因だ。2021年8月中旬に現地を訪問された方がTwitterに写真を投稿したことで抜け落ちていたことに気づき、本Blog記事を加筆修正した。

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写真8 河口湖自動車博物館の中庭に置かれているT-6G。かつては九州にあった機体だ。(2019年08月20日撮影)

 

(11) 52-0099 (T-6G) 埼玉県所沢市航空発祥記念館(元都立航空高専展示機)

写真9 所沢航空発祥記念館のT-6G (52-0099)。(2023年2月18日撮影)

 

(12) 52-0100 (T-6G) 岐阜県美濃加茂市ヤマザキマザック工作機械博物館、元岐阜基地展示機、空自の無償貸付機。

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写真10 ヤマザキマザックの持つ工作技術をふんだんにつぎ込み、国内最高レベルで綺麗に修復されたT-6G (52-0100号機)。いつまでもこの姿を残していただきたいと強く願う。(2021年7月28日撮影)

 

(13) 52-0101 (T-6G) 京都府南丹市るり渓温泉ゼロ戦研究所。ゼロ戦風に濃緑色に塗装。近い将来敷地改装を行うために譲渡先を探す旨の報道が2022年にあったので、訪問するならお早めに。

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写真11 るり渓温泉ゼロ戦研究所のT-6Gは譲渡先を探している最中だ。2025年ごろには姿を消すことだろう。(2021年8月5日撮影)

 

(14) 52-0118 (T-6G) 宮崎県都城市のホテル2 in1(31.7057, 131.0326)入口にアイキャッチャーとして置かれている。

写真12 ホテル2in1の入口でアイキャッチャーとなっているT-6G (52-0118)。(2022年4月20日撮影)

 

(15) 72-0131 (T-6G) 山梨県身延町 個人コレクションのため座標は非公開とする。本機は甲府舞鶴公園(現舞鶴城公園)展示、入間基地に返却、OldCarCenterKudan展示、横浜の喫茶Avion展示を経て、2012年2月には当地に存在していた。

写真13 各地を転々としてきたT-6G。(2019年8月20日撮影)

 

(16) 72-0142 (T-6G) 群馬県桐生市桐生が岡公園。キャノピーは無くなりパンチングメタルで整形されている。

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写真14 桐生が岡公園のT-6G (72-0142)。キャノピーの窓は無くなり、パンチングメタルで覆われている。2022年春ごろには再塗装されて綺麗な外観になった。(2019年8月3日撮影)

 

(17) 72-0147 (T-6G) 岩手県陸上自衛隊岩手駐屯地。2014年公開時にはオリーブドラブに塗装されていたが、2019年6月公開時には元の黄色塗装に戻されていた。

写真15 陸上自衛隊岩手駐屯地のT-6G (72-0147)。そろそろ再塗装してもイイ頃合いだと思う。(2023年6月18日撮影)

 

(18) 72-0169 (T-6G) 宮崎県新田原基地 先代のT-6G展示機”72-0178”号機が2000年前後に解体された後に展示された二代目のT-6Gだ。

写真16 新田原基地のT-6G。側面を撮るには植樹が少々ジャマとなる。(2022年12月4日撮影)

 

(19) 72-0176 (T-6G) 福島県オールドカーセンタークダン。”72-0022”と記載されている。かつて入間基地に展示されていた機体が廃棄されたあと、業者から回収して再度組み上げた機体だ。

写真17 オールドカーセンタークダンのT-6Gは”72-0022”と機体に記されているが 本当は”72-0176"号機だ。(2021年12月11日撮影)

 

【その他】

(1) 52-0129 (T-6G) 宮城県 松島基地 2017年の台風で破損した元広報展示機(52-0080と記入)の胴体が松島基地内(38.4093N, 141.2117E)に放置されている。2019年夏から2022年8月28日の松島基地祭時にそのままであったことが確認されているが、おそらくは修理されることなく解体・撤去されるだろう。

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写真18 松島基地の管制塔近くに放置された元展示機52-0129(52-0080と記載)。(2019年8月25日撮影)

 

【展示後廃棄】

 数が多くて追い切れていないため、原則として本Blog立ち上げ後に廃棄が確認されたもののみを紹介する。気が向いたら過去の記録も記載していこうと思う(真剣にヤル気なし)。

(1) 52-0082 (T-6G) 石川県小松基地 掩体壕内には旧軍風迷彩塗装の機体があったが、2021年4月1日にここを見学した日本戦跡協会さんのTwitter投稿によると本機は姿を消していた。基地内に保管されているのか廃棄されたのかは不明だが、本Blogでは存在が確認されるまでは廃棄されたものとして扱う。

(2) 52-0128 (T-6G) 埼玉県熊谷基地 2021年2月12日までに解体撤去された。

写真19 かつて熊谷基地に展示されていたT-6G (52-0128)。(2019年4月14日撮影)

 

(3) 72-0178 (T-6G) 宮崎県新田原基地に展示されていたが2000年前後に解体された。

以上