用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【基礎編】用廃機の探し方

<編集履歴> 12Feb.2019公開、27an.2024見直し更新(第11回目、見直し更新)

 

【はじめに】

 どうやって用廃機を探しているのですか?というご質問をときどき受けます。

 各国の辺鄙な所に置いてある用廃機の調査方法はイロイロありますが、私の場合はネタ本とネット情報などを複数組み合わせて探しています。

 そして得られた情報を組合わせて「今もまだ展示されていそうだな」と判断したら、現地に行くための情報を集め、最後にもう一度「最新の情報」を確認して、「今もある」と判断したら現地を訪問するための手配を行うようにしています。

 

【調査方法】

それでは具体的な話を紹介しましょう。

まず初期情報はネタ本とネット情報から入手します。

【ネタ本】

 ネタ本が出版されています。世界各国の情報を知るうえで比較的有名なのは最初に掲げた二冊でしょうか。国内にある機体を網羅的に紹介した本は2023年11月にイカロス出版から発行されています。

(1) "Aviation museums and collections of the rest of the world"(Bob Ogden著、Air-Britain発行、2nd.Ed発行2019年10月

 タイトル通りでヨーロッパ編とアメリカ編が別書であります。実際のトコロ、ヨーロッパ編とアメリカ編が「本編」でアジアやオセアニアは「残りの世界」扱いなのですが、まぁ気にしない。ちなみにこの本の日本と韓国、中国、インドネシアの一部については私が著者と直接やり取りして情報や写真を送っています。しかし説明のために送付した原稿はほぼ100%修正され、跡形もありません(笑)。

 2019年10月に出版された第2版は40ポンド。写真は全く無く、展示場所名、展示機のシリアルナンバー、緯度経度情報がひたすら羅列された無機質な本に仕上がっています。正直言って後述のSpottingmode.comを見ていれば十分かとも思います。もちろんその他の情報(例えばシリアルナンバーの変遷(機体所属の経緯)など)もいくらかありますので、持っていた方が”ベター”ではありますが。

 なお著者が「出版するぞ!」と宣言してから3年以上経過して出版されたので、私が提供した日本や周辺国の情報は古くなり、すでに機体が存在しない場所などが散見されます。アップデート情報は送ったつもりなんだけど反映されずに出版されたのは少々悲しかったデス。

(2) "World military out of service"(Andy Marden著、MACH IIIPublishing発行)

 私自身は所有していないのですが、ネット上では”AndyのWMOS”という英文頭文字だけの略語で話が進められることがままあります。近年ではほぼ毎年のように改訂版が出版されています。日本円で3,000~4,000円程度。

(3) "日本で見られる保存機・展示機ガイドブック"(イカロス出版2023)

 国内の軍用機のみの紹介本。2023年夏の時点で、本Blogに掲載されていた情報に加えて共著者2名と編集担当者の書いた文章が読めます。税込み2,200円。国内のドコに何が置いてあるかというデータだけが判れば良いという方は、本書を購入しなくても本Blogを眺めたり、ネット検索していれば十分でしょう。

・参考:制作にまつわる裏話はこちら;

日本で見られる保存機・展示機ガイドブック制作秘話 - 用廃機ハンターが行く!

 

【ネット情報】

 最初から「Google大先生にお伺い」しても構いませんが、体系的に述べてみましょう。順番としては次のようになります。

1) 用廃機マニアの専門サイトを見て、基本情報を確認する。Spottingmode (www.spottingmode.com/)のWrecksのコーナーに国ごとに発見された機体と座標と機体が記されていますので、その位置(座標)を確認します。

2) 航空機写真投稿サイトで展示状況を確認する。airliners.netやjetphotos.comの写真検索機能を使って、展示機の画像を確認します。

3) 航空機マニアのデータベースサイトで展示状況を確認する。写真投稿サイトの最新情報と調査時点での日数に開きがある場合、Scramble.nlなどのデータベースサイトで、当該機のS/Nから展示情報を確認します。まぁ、念のための再確認という意味合いが大きいですが。

4) 自分で検索を行い、一般の方のblogやX(旧Twitter)投稿情報から、最新の様子を確認する。「Google大先生にお伺い」することが一般的かと思いますが、原則として英語で「訪問予定地」+「飛行機」/「航空機」/「戦闘機」/「機種」などの用語を組合わせて検索します。得られる情報が少ない場合には「飛行機」や「戦闘機」などの単語は現地語に変換して検索を行います。現地語への翻訳はネットの自動翻訳機能を使います。検索結果として現れた子供や彼女を撮った写真の背景に機体が写っていたらめっけもの。投稿された文章から国、地域、設置場所を割り出し、機体を特定します。必要な場合、可能であれば投稿者にメールで確認します。

※ 2)と3)は順番を入れ替えても構いません。マニアサイトの記載事項が正しいかどうかの確認です。また4)は現在も見ることができるかどうかの確認です。

 

 日本国内の展示機については「ヒコーキ雲」さんが最大のデータベースだと思います。他にもATLAS-WEBさんの投稿コーナーや、FlyTeamさんや本Blogのような個人サイトで用廃展示機を取り上げていますが、データベース的な運用をしているサイトを私自身は見つけていません。

 このため日本国内の情報であっても上述したSpottingmode.comを利用した方が見つけやすいような状況となっているように思います(2024年1月27日時点)。

 

【衛星画像の確認】

 おおよその位置を掴んだらGoogle map/Earthの衛星画像で機体の位置と設置状況を確認します。(Spottingmode.comで探した場合には、Googleの地図と連動していますが、ここでは別個に確認することを前提に書いています)。Google mapでは記載された地所と衛星画像がズレることがありましたので注意してください(2020年以降には、このような例は少なくなってきているように思う。精度が向上しているのだろう)。また、ザッと確認するだけならGoogle Mapで十分ですが、最新情報を得るにはGoogle Earthを利用します。この場合Google Earthはwebにアクセスするだけでなく、Google Earth Proをダウンロードしないと最新の画像は得られませんのでご注意ください(本件については失敗談があります。別稿参照のこと)

Google Earth Proの使い方 - 用廃機ハンターが行く!

 韓国の展示機は韓国Daum、中国の展示機は中国の百度の衛星画像の方が解像度が良い場合があるので、これらを併用することがあります。ただし、この二つは基地や軍事的に重要な施設の画像に修正が多く、調査には役に立たないこともよくあります。具体的には空港の軍事エリアの画像が公開されていなかったり、軍事基地周辺道路が突然途絶えて森林になっているなどの画像加工が行われています。あらかじめこれを知ったうえで利用してください。逆を言えばGoogle Map/Earthに表示された場所が百度やDaumで表示されない場合には、そこが軍事施設だと判断することができます。

 

【現地へのアクセスを確認する】

1) 博物館などの公共施設のHPにはアクセス手段を記載していることが多いのですが、公園や空き地に展示(放置)されている機体の場合にはGoogle Mapの路線図情報機能を手始めに用いてアタリをつけます。

2) 次いで現地のバス・鉄道などの会社のHPを探して路線を確認します。

3) また旅行者(主としてフツーのところには行かないバックパッカーな方々)の旅日記などを参考にして、現地への交通手段を確認します。この場合、休みの取りにくい日本人の記事を探すより、長いバカンスをとる西欧人の旅日記を見る方が情報を得やすいでしょう。すなわち英語やフランス語で探したほうが見つけやすい、ということです。

 

【情報の「鮮度」を再確認】

 場所を特定し、現地へのアクセスが判ったら、その展示場所を訪問した記事の最新投稿日を確認します。ある時点以降の投稿が無くなった場合には、機体が撤去されている可能性があるので注意が必要です(Google Map/Earthの衛星写真更新時期とのギャップがある)。また撤去作業、移転作業、あるいは新たな機体の設置作業の様子が見つかることもあります。

 再確認の結果「現存する」と判断したら、あとは現地を訪問するだけです。

お気をつけて行ってらっしゃい!

 最後に、現地にて「先週撤去された」というような「最新情報」が得られることも、稀にはあります。ネット上に無い、新たな情報が得られたら、参照したサイトに投稿するなどして、情報のUpdateに務めましょう。自分以外の誰かが、その情報を利用できるようにするために。情報はGive and Takeが原則です。常に次の人/次の世代の人に情報を伝えることができるよう、心がけて欲しいと思います。

以上