用廃機ハンターが行く!

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【重箱の隅つつき】防衛白書のファントム記事

<編集履歴> 14Jul.2021公開、15Jul.2021 見直し更新(第1回目、記載内容見直し字句表現等を修正)

 

2021年7月13日に公開された令和3年度防衛白書

その中に「F-4戦闘機の退役~ファントムIIの第2の人生~」というコラムがあり、昨年度末で全機が退役したファントムの第二の人生、すなわち展示機に関する記事がある。

場所は「第5章 地域社会や環境との共生に関する取組」の「第3節 情報発信や公文書管理、情報公開など」の455ページだ。

https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/R03040503.pdf

 

この記事の中には本Blog的な目で見た時に突っ込みどころが4か所ほどあるので紹介しておこう。

1.良いと感じた部分

 記事では「ファントムⅡに限らず、これまで航空自衛隊で運用してきた重要な装備品は、その役目を終えると、航空自衛隊の各基地や浜松広報館(エアーパーク)、又は「防衛省所管に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する省令」に基づき、要望される地方自治体、博物館などにおいて展示機(品)となることが第2の人生の始まりとなります。」と「第二の人生」への流れを紹介してます。「省令の存在」も紹介して記載した点がGood!です。

 本Blogで用廃機を管理するために法規制等について紹介したあと、いくつかの航空雑誌の記事で「防衛省所管に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する省令」が紹介されていました。最初にこの省令を紹介したのはJW誌2021年3月号p.120「退役ファントムのゆくえ」だったと記憶していますが、間違ったらごめんなさい>他紙関係者殿。ようやく本家(防衛省自衛隊)のオフィシャル一般向け文書にこの省令が取り上げられたかな?などと思ってますが、MAMORあたりで取り上げられていましたっけね?(記憶に無い)

 一般人にとっては普段とっつきにくい法規制等ですが、機会あるごとに紹介することで関心を高めることにつながるでしょう。今は六法全書が無くとも、スマホがあれば「ココにある」と指示すればすぐに読める時代なのですから。

 

2.展示されている基地が違うぞ!

 記事では「ファントムⅡは、航空自衛隊内においては、これまで千歳、三沢、百里、岐阜、新田原及び那覇の各基地に展示され(以下略))」と、ファントムが展示されている基地を列挙している。その中で三沢基地が記述に含まれているが、実際には「三沢基地航空自衛隊のファントムは展示されていない」のだな。

 三沢基地内に展示されているのは「米空軍のF-4C」だ。隣接する青森県立三沢航空科学館に展示されている「航空自衛隊のファントム」と混同したのかとも思ったが、数行後ろには「一方、航空自衛隊外においては、青森県立三沢航空科学館(青森県三沢市)、(以下略)」という記述があるので、「混同」したとは考えにくい。執筆者が展示基地を明らかに間違えのか、三沢基地にある米空軍ファントムの展示機と「混同」したのではないだろうか。

航空自衛隊 F-4ファントムIIの展示機 - 用廃機ハンターが行く!

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写真1 これは”三沢基地展示機”じゃないよ。(2019年2月6日、三沢航空科学館にて)

 

3.展示時期が違うぞ!

 上記の引用文のあとには「令和2(2020)年度は新たに小松、美保及び築城の各基地並びにエアーパークに展示され(以下略)」という記載が続く。小松基地正門奥に404号機が設置されたのは2020年10月、エアーパークに440号機が展示されたのは2021年3月なので「令和2年度」だが、美保と築城には防衛白書発行時点に至るも、まだ展示はされていない。

 どうしてこのような「時系列上の事実認識ミス」が生ずるだろうか?

 「予想記事」を掲載したのであれば、本記事の締切日(最終校正)は年度末ということになるだろう。予算処置上は令和2年度予算で実施することになっているけれど設置工事が伸びているのかもしれない。そうすると予算処置ベースで記事を書いたのだろうか。それとも「単なる」担当者の確認ミスだろうか。そもそも執筆者はどのような「元ネタ」をベースにこの記事を書いたのだろうか?

 全国の基地に展示されている機体などは「物品」として管理されているハズだ。昨年末に浜松基地広報館の機体移動の公告には移動する機体に個別の物品番号が付与されていたことがその根拠だ。恐らくは全国の基地展示機には固有の物品番号が付与されて、今どきの管理のやり方からこれらは当然、電子管理されているものと考えている。この物品番号に統一性があるなら比較的簡単に検索できるが、番号を間違って入力していたり、異なる体系の物品番号が付与されている場合には永遠に日の目を見ない物品も存在するのではないかと考える。

 また、その電子管理台帳の備考欄(電子管理台帳なるものが存在し、かつ、そこに備考欄があるとすれば、のハナシだが)記載の情報が「予想」で入力されたものであったとしたら、それが更新されていないという管理上の不備があることになる。「三沢」にファントムがある/無いとか、美保や築城にファントムが展示されている/いないという現状の情報が物品管理データから「得られない」のであれば、用廃機に限らず「物品」一般について管理体制の不備が内在するのではないかという疑念も湧いてきますね(ぶっちゃけ「在庫・財産の管理している?」「その管理はできてる?(棚卸している?)」というコトになりますか)。

 まぁ、とにかく数値の記載ミスについては後述するが、歴史的事実の発生時期の確認も十分にやって欲しいと思う。

 

4.今後に期待? 

 記事の最後に「今後、自治体や博物館に展示されるかも」という一文がある。

「博物館」とは岐阜かかみがはら航空宇宙博物館のことだろう。ウワサレベル(および私個人の期待・予想として)だが、国内で改造を施した初号機である07-8431号機になると思われる。

 では「自治体」とはどこのことだろうか?

 記事の締切日と発行日までの「時差」があるので、これは先日「メタセの杜」に展示された機体のことかもしれない。だけど「メタセの杜」は築上町第三セクターである「株式会社ついきプロヴァンス」が運営しているので「自治体」とは言い切れないのではないだろうか。そうであれば、まだ話が公になっていない自治体との折衝が続いているのではないか、という期待が残る。ただし書類上、機体は築上町に貸与したことなっており、築上町が「メタセの杜」に展示した、ということもあり得るのだが。

 2021年7月13日時点では岐阜基地には301号機を含む3機程度のノーマルファントムが残されている(うち1機のコクピットは岐阜地本に展示予定とのこと)。百里基地には白オジロとRF-4E初号機がまだ残されているハズだ(解体されたという情報を得ていない。ちなみにTwitter情報によると黒オジロ、黄ガエル、青ガエルは解体された模様)。

 「自治体」がどの程度の範囲かは判らないが岐阜基地百里基地周辺、すなわち岐阜県内、愛知県内、茨城県内あたりの市町村に展示される「可能性がある」と勝手に解釈し、その進展に期待しておきたいと思う。

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写真2 文書だけではつまらないので一枚。(2006年11月3日、入間基地航空祭にて)

 

 <最後に>

 防衛白書はのちのち参考にすることの多い資料だ。

 しかし「正誤表」が発行されないので、その数値などを「鵜呑みにできない」欠点がある。このことは別記事「おかしいぞ?防衛白書のファントム保有機数」内で、改修されていないF-4EJの保有機数がおかしなことになっていることを例として指摘している。

おかしいぞ?防衛白書のファントム保有機数 - 用廃機ハンターが行く!

 

 防衛白書のページに読者コメント欄を設け、即公開せずに無意味な誹謗中傷などをフィルタリングする程度で公開すれば、さほど手をかけずに”国民は”「誤った情報」と「正しい情報」を知ることが出来るのではないだろうか。

 

以上